第11回アジア農村医学学術会議総括

◇第11回アジア農村医学会議    主催者の英文案内 (First Announcementより)
              アジア農村医学会について


アウランガーバード宣言

 

11回アジア農村医学学術会議

アウランガーバード市、インド

2008年2月2224

 

テーマ

 

アジアにおけるミレニアム開発目標への総合的アプローチ

 

 

 2008年2月2224日、インドのアウランガーバード市で開催の第11回アジア農村医学学術会議に参加したわれわれは、下記宣言を満場一致をもって採択した。

 

 われわれは、健康が開発と不可分のものであり、一般的に言って全世界、それも特にアジア地域においては、総合的な取り組みが、21世紀開発目標を達成する必要性を再確認した。こここで言う「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals :MDG)とは、下記のとおりである。

 

1.極貧と飢餓の根絶

2.普遍的な初等教育の達成

3.両性の平等の推進と女性の地位の向上

4.乳幼児死亡率の低減

5.母親の健康の向上

6.HIV/AIDS、マラリアやその他疾患との闘い

7.環境の持続可能性の堅持

8.開発のためのグローバルなパートナーシップの育成

 

 われわれは、農村地域であらゆる段階で資源が入手可能でないことからして、MDGの達成で都市部と農村部との格差が拡大していることを認める。

 

 われわれは、全てのMDG、目標と指標は健康に直接的かつ間接的に関連しているものと認識する。貧困、基礎学力の不足と社会文化的要因の悪循環は、貧困のさらなる悪化をもたらす長患いの原因になっている。

 

 われわれは、2006年イタリアのロディで開催の国際農村医学学術会議で採択した「健康な村」を目指す運動の公約を完遂することを再確認する。

 

 われわれは、国連が最近の報告書で述べたように、世界全域で諸種MDGの達成に前進がなされていることを認める。アフリカのサハラ以南やアジアの幾つかの地域で、MDGが達成されていない過酷な現実が、関係者すべてにとり大きなチャレンジとなっているものの、われわれは数少ない地域において成功談があることを、その反復を望みながら認めている。

 

 われわれは、持続可能な成長を公平と平等の原則に基づき達成するため、直ちに留意すべき地域的な不均衡がアジア地域にあることを認める。

 

われわれは、アジア地域住民が主として農村住民であり、全世界の最も貧困な住民の半数が、アジアに在住していることを認める。これら地域では、飲料水、衛生設備、住宅、教育、医療へのアクセス、社会基盤や利用可能な雇用機会といった基本的なアメニティが欠落している。

 

 われわれは、人口のうち70%以上が狭隘な小作地で農耕に依存して生活していることを認識している。資金面の制約、国際化や不安定な国内政策による乏しい生産性により、農業は発展可能でなくなり、無計画な都市化への道を開いている。また、農民による自殺は、金銭的そして社会的プレシャーからして、たいへん深刻な問題を提起している。農村は極めて脆弱になっている。また、われわれは、農業が鉱業に次いで最も有害な業種になっていると認識している。

 

 われわれは、容認できないほど高い母親の死亡率、乳児死亡率、出生児の低体重、HIV/AIDS、結核やマラリアは、農村社会にとりチャレンジとなっていると認識している。

 

 われわれは、国内における財政的支援や国際贈与機関によって強力に支持された政策面におけるコミットメントや政府による政策転換が、アジアにおける低開発国や発展途上国がMDGを達成するのを支援するために、必要であると確信している。

 

 われわれは、貧困の軽減が人類の発展のために必要不可欠であると認識している。

 

 われわれは、子供の権利に関する国連憲章を再確認する。子供は、社会で最も脆弱な一員である。われわれは、「先ず女の子を」との原則に基づき行動に出ることを誓約する。女の子が開発の過程に実際に参加できるようにするため、無料の教育と社会保障を提供することを、各国政府に要請する。

 

 社会経済的施策で女性への権限の付与と両性の平等は、MDG-3を達成するのに重要である。同様に、自助のグループ、少額資金供与計画と協同組合経営銀行の発展と、これらを健康、農業、社会政治的機構によって統合し、女性の組織化を図ることは、MDG-3の達成にとり重要である。

 

 女性に対する暴力の問題は、支援運動と大衆の認識を通じ、それに社会的プレシャー・グループの組織化によって対処しなくてはならない。各国政府は、性を鋭敏に受け止められるものにし、政策の効果的実施を確実にするために、現行の全ての政策を是正するかどうかを審査すべきである、

 

 堕胎が多くのアジア諸国で驚くべき速度で増加しつつある。男女比が急速に低下しつつあり、社会崩壊の大きなリスクが存在している。両性の平等と男子と青年の教育は、学校や大学でカリキュラムの一部として取り上げられるべきである。

 

 乳児死亡率と母親の死亡率は、防止可能なことからして、社会・文化的解決策が必要な憂慮すべき指標となっている。早婚と楽観的な結婚、栄養不良、遠隔でしかも医療費が手頃でない医療施設は、政策立案者にとり主要な関心事となるべきである。母親の健康は、いかなる社会にあっても開発についての最も重要な指標であり、母親の健康は「健康な国」造りにとり一義的に重要な問題である。性と生殖に関する健康について、若者を教育することは、いまや必要事項となっている。

 

 われわれは、心理・社会的、文化的環境を考慮し、伝統的な産婆を研修させ、助産婦の研修計画を強化することによって、自宅での安全な分娩が必要とされることを認識している。Anti-natalな症例それに補足的な栄養計画に連動するリスクの高い産科症例の医療施設における分娩の早期登録は、母親の有病率と死亡率の上昇を防止するため、最優先されるべきである。われわれは、医療供与システムで訓練終了の人的資源の重要性を認識している。プライマリー・ヘルス・ケアの主力となるべき看護師やパラメディカルの位置づけと役割を認識している。大学、医療提供者とヘルス・マネジャーとの間に、協力関係があるべきである。

 

母子の医療供与には補完と補充の関係があるものと確信し、したがって薦められた安全に関わる慣行は、これら相互関係で検討されるべきであると、われわれは認識している。われわれは、もっぱら母乳による育児の重要性を認識しているものの、この慣行は母親の栄養状態に照らして検討されるべきことを薦めたい。

 

 われわれは、生産性と貧困に相互関係と、相互依存関係があることを認める。われわれは、農業生産性の向上が、資金繰り、マーケティングと社会基盤といったインプットの質とその他支えとなる要因しだいであることを承知している。われわれは、農村社会の位置づけを向上させて、それによって農村での開発のプロセスを加速化させるため、情報技術と生物工学で現出する分野が重要なことを認識している。

 

 プライマリー・ヘルス・ケアの取り組みは、地域社会の延長となるべきである。これは、プライマリー・ヘルス・ケアのサービスとセンターを組織化して運営するため、コミュニティー健康委員会を設立することによって達成できる。

 

 さらに、われわれは、アジア地域住民の50%が飲料水に不足しており、このことは関係各国政府による基本的人権の否定を意味するものと理解している。水道管による水の供給によって十分かつ安全な飲料水の供給を確実にするため、われわれは十分な公共出資によって、コミュニティーとパートナーが共同して飲料水を改善すべく、真摯に注目を払うよう、関係各国政府に要請する。必要に基づき、しかも適切で実行可能な技術が、コミュニティーの任意の参加者と共同して採用されるべきである。

 

 アジア地域における大半のコミュニティーには、適切な衛生設備が欠けており、数多くの重篤な健康障害を惹起する結果となる環境汚染を発生させている。衛生は国家予算においてこれまで常に優先度が最低であったが、このことは是正されるべきである。有病率と死亡率は、衛生面での優れた慣行と安全な飲料水とは、直接相対的な関係にある。

 

 非伝染性疾患はいうまでもなく伝染性疾患で、アジア地域は三分の二を占めており、主とした感染症としてはマラリア、結核、HIV/AIDS、ガン、糖尿病それに労働関連疾患がある。これら疾患の大半は予防あるいは回避できるので、各国は政策を改善し、社会基盤を向上させるため、十分な施策を実施すべきである。

 

 われわれすべては、「思考は世界的視野で、行動は地域的に」とする原則を共有している。

 

 われわれ参加者は、各国政府は言うまでもなく、すべての利害共有者にこの宣言を伝達すること、われわれの職業そして個人としての生活で、この宣言に文面と精神もろとも従うことを誓約する。

 

 


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