[農薬中毒部会]

 

 

1.統括責任者:伊澤 敏・佐久総合病院統括院長

 

2.研究期間  平成17年5月〜

 

3.研究協力施設

承諾を得た全国の厚生連病院、救急救命センターから農薬中毒の症例について報告を受ける。

 

4.研究目的

 農薬は使用量が減少しているとはいえ、なお全国の農業現場でさかんに用いられている。しかし農薬中毒の全国レベルの実態はわかっていない。
 そこで、全国の厚生連病院その他に依頼し、農薬中毒の実態を明らかにし、全国の農薬中毒に関する基本資料(データベース)造りを目的とする。

 

5.石灰硫黄合剤による皮膚障害の防止を求めるパンフレットの作成

 石灰硫黄合剤による化学熱傷は、ちょっとした不注意で重症となることがあり、症例報告が後を絶ちません。
 本部会として、障害の防止を求めてパンフレットを作成しましたので、ご活用ください。
 
パンフレット「石灰硫黄合剤の散布は気をつけて!!

 

6.平成27年度研究概要

(1)農薬中毒臨床例全国調査

日本農村医学会会員施設から54例の症例が収集され、原因となった農薬、曝露の状況、転帰などについて検討した。主な結果は、①症例発生の曝露条件をみると、自殺による症例が67%であり、散布中などの曝露による症例(17)、誤飲誤食による症例(13)などもあった。②原因農薬としては、グリホサート剤(10)、スミチオン剤(6例) が多かった。③死亡例が6例報告され、有機リン剤によるものが5例、パラコート剤によるものが1例報告された。

 

(2)施設栽培者の農薬曝露の実態に関する研究

2014年度に引き続き福岡県南部の電照菊部会の健康診査に合わせ、受診者の尿中のネオニコチノイド殺虫剤を測定した。また、福岡県南部の施設栽培者集団についても健康診査に合わせ測定した。検出レベルとしては、両集団の間に差は認めたが、近日の農薬使用との関係は認められなかった。前年度までに調査し、花卉栽培者において著しい場合もあった、有機リン殺虫剤の代謝物濃度、土壌燻蒸剤による自覚症状とは異なる傾向であった。

 

(3)石灰硫黄合剤による化学熱傷の防止に関する啓発

石灰硫黄合剤による化学熱傷は、3度の熱傷を惹起することがしばしばであり、症例報告が後を絶たない。この障害を防止することを目的としたパンフレットを、この剤が使用される時期の前にJAの営農指導部局などに配布し、果樹生産部会員などへの啓発を依頼した。

 

(4)パラコート中毒の疫学的研究

2007-2013年の臨床例調査により、5%製剤による自殺例31例が報告され、25(81)が死亡した。1998-2003年にかけて、我々が行った調査における死亡率81%と有意差はなかった。この間、症例数は、半数以下に低下しているが、これは、パラコート剤の出荷量の低下と相関していた。

 

7.平成28年度計画

(1)事業方針

農薬は、本質的に生物毒性を有する化合物群であり、農業・衛生などの目的のため、農場・家屋内などで開放的に使用されており、農薬中毒、環境汚染などを引き起こしてきた。また、自殺企図で服用される事例も後を絶たない。

農薬の人体への曝露、影響の実態調査を行い、曝露を低減し、悪影響を予防するための研究を行う。

 

(2)調査研究項目と研究内容

① 農薬中毒臨床例調査

日本農村医学会関連施設の協力のもと、平成19-27年度に引き続き、農薬中毒の臨床例を収集し、原因農薬、曝露の状況、転帰など中毒の傾向を解析する。

② 施設栽培農家の農薬曝露とその影響に関する研究

施設栽培は、温度の制御が可能で作物に雨水がかからないなどの利点から、野菜、花卉などの生産のため、広く行われている。一方、農作業者の農薬曝露という観点からは、散布作業者はもちろんのこと、散布作業に携わらない者であっても、長時間施設内で作業すれば、残存している農薬に曝露されることが予想される。施設栽培作業者の農薬曝露指標を測定し、曝露の低減およびその影響の防止の方策を研究する。

③ 石灰硫黄合剤による化学熱傷の防止に関する啓発

石灰硫黄合剤による化学熱傷は、3度の熱傷を惹起することがしばしばであり、症例報告が後を絶たない。本部会で策定したパンフレットを用い、平成26年度に続き、JAの営農指導部局などを通じて啓発活動を行なう。

④ パラコート中毒の臨床的・疫学的研究

パラコート中毒は、死亡率において農薬中毒の中で筆頭である。()の農薬中毒臨床例調査で収集された、パラコートを原因とする症例について二次調査を行ない、臨床的・疫学的に検討を行なう。

 

(3)研究成果の発表等

日本農村学会における発表、日本農村医学会誌への投稿。

 

(4)平成28年度 経費見込額 概算100万円



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